第1話:ミノネリラ進攻

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   ウモルヴェ星系会戦におけるノヴァルナの戦術は、第八惑星ではなく第九惑星ニレ・マーダン近郊で、イースキー艦隊に攻撃を仕掛けるというものであった。  直卒の第1艦隊から戦艦部隊を分離し、第九惑星ニレ・マーダンを半ば飲み込む形で広がっている、『ナグァルラワン暗黒星団域』の星間ガス雲の中に潜ませて、自らの『センクウNX』と『ホロウシュ』のウイザード中隊で先行。ガス雲の至近または、ガス雲内部を通過する敵艦隊に奇襲を仕掛け、二十機程度のBSI部隊ではダメージを与え難い、戦艦などの主力部隊への攻撃は避けて、それを護衛している宙雷戦隊を襲撃、速攻で離脱。敵が陣形を乱した状態で第九惑星ニレ・マーダン付近を航過したところで、ウォルフベルト=ウォーダの第5艦隊に、第1艦隊から分離した宙雷戦隊と空母部隊で第二次攻撃を行うのだ。  旗艦となる軽巡航艦を先頭に、十四隻あるいは十六隻からなるウォーダ軍の宙雷戦隊が、槍のように単縦陣を組んで次々と突撃する。 「敵宙雷戦隊群、急速接近。突撃して来ます!」  オペレーターの緊張した声に、前衛部隊のフィビオは腕を振り回して、迎撃を命じた。 「こちらも宙雷戦隊で―――」  だが味方の宙雷戦隊は後方の星間ガス雲の中に、置き去りにしたままだ。それを思い出して、慌てて言い直す。 「い、いや。艦載機で迎撃させろ。発艦急げ!」  ただそうは言っても、先手を取られた状況で、それほどの数の艦載機を発艦させるのは不可能だ。しかも三十機ほどのBSIが発艦したところで、宙雷戦隊はやや遠距離ながら、宇宙魚雷による一回目の統制雷撃を行った。三百本以上の宇宙魚雷がイースキー艦隊へ襲い掛かる。 「馬鹿な! 雷撃タイミングが早すぎるぞ!」  いくら実戦経験が少なくとも、戦闘のセオリーは知っていて当然のナーガイであるから、ウォーダ軍の思いがけない行動に戸惑いの声を上げた。しかも統制雷撃を行った宙雷戦隊群は、一斉に退避を始める。接近する宙雷戦隊に主砲を向けていたイースキー艦隊の重巡、副砲を向けていた戦艦は肩透かしを喰らった形だ。その一方で発艦したBSI部隊は、宇宙魚雷の迎撃に追われる事となった。回避能力を有する自立思考機能を持つ魚雷であるから、撃破するにも簡単にはいかない。  そしてその時だった。ウォーダ艦隊の後方にいた空母打撃群から発艦した、全てのBSI部隊が戦場に出現したのだ。  
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