序章

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「……誰がチクリやがった?」 押し殺した声には、妙な迫力があった。 少年より年上の銃士仲間達を震え上がらせるには、十分なほどに。 それらを押し退けるようにして、銃士の隊長は少年をしかと見つめる。 「……聞こえなかったようだからもう一度言おうか? アッシュ・ファルスト、これは一体何の騒ぎだ」 「こ……コイツがいきなり襲いかかって来たんスよ! 年下のクセに俺の胸倉掴みかかってきたもんだから……」 少年──アッシュをちらちらと伺いながら、尻餅男がいう。 隊長は地面に落ちた男の剣を見やり、 「胸倉を掴みかかられた。 ……それで剣で応戦し、押し負けたのか?」 皮肉げに隊長が男に言うと、男がばつが悪そうに視線を逸らす。 隊長はアッシュへ向かった。 「──お前がいきなりヴィルストンの胸倉を掴みかかった、そして剣で応戦されたのでお前も剣を抜いた。 そこに間違いはないか?」 ヴィルストンというのは言わずもがな、尻餅をついたままの男の名だ。 わざわざアッシュに問いかけたのは、隊長自身、真実を図りかねた為だ。 ヴィルストンは、よく自分を不利にしない為の嘘をつく事がある。
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