4人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
館長有森晴美
有森晴美は館内を見渡す。
本を読むのが大好きで、四十年働いて貯めた財産で地元に図書館を設立したが、やって来るのは小学生の女の子一人。
それでも毎日通ってくれる姿は嬉しく思う。
ある日、話しかけてみようと思い近づくと、首や腕、足首など見える部分のあらゆるところに痣があった。
「虐待…… 」
そう思うと微笑んでいた顔に緊張が走り、声を掛け損ねていると、
「あっ、これ……
うん、大丈夫だから…… 」
真由に悟られ、痣の部分を必死に隠そうとしている。
有森晴美は表情を元に戻し、
「ここでは何も隠さなくていいから」
優しく微笑み直し、優しい言葉を掛けた。
その次の日からは、痣が見える事を気にすることもなく真由は読書に没頭しているが、有森晴美にとっては消える事のない大量の痣が毎日のように目に焼き付く。
日曜日の休館を挟んだ月曜日、いつものように学校を終え、黄ばんだランドセルを背負ったまま館内に入ってくる真由。
有森晴美は優しく微笑んだ後、自然と真由の露出している部分にある大量の痣を確認する。
違和感を覚え思考を巡らす。
「あっ…… 」
声を上げそうになるのを、右掌で口を塞いで止めた。
有森晴美は居ても立っても居られなくなった。
真由が本を手に取りいつもの場所へと座り、本の世界の中へと没頭したのを確認すると、急いで図書館を飛び出した。
最初のコメントを投稿しよう!