3.つまりはそういう事

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 そして予想通り、それからはわりと多忙な日々。ひと月なんてあっという間で、少し前に六月が始まったばかりだというのに、おかしい、今日でその六月も終わる。 * 「パン・オ・ショコラとフルーツサンド、餡バターにスコーン、今日はまたどうしたの、油分糖分取り過ぎですから」 「……芙美、食べる?」 「要らないって。ウタさ、ボーッとしながらあのパン屋行くのやめな」  午前中の打合せで頭を使い過ぎたか、心身共に糖分不足。またやってしまった。 「忙しそうだね」 「そだね、この数日ちょっとね。仕事やってもやっても湧いてきて、嬉しくない悲鳴」 「そっか、例のプロジェクト?」 「ちがう、それもあるけど、元々担当してるプロダクトの販促物を至急とか、納期直前にデザイン変更とかいろいろ立て込んで」  久々にお昼を一緒に過ごす芙美に、とほほと項垂れながらつい愚痴る。  ありがちだがここ数日は特に、決定事項を変更してはまた戻すという作業が続いたり、漠然とした情報だけ渡されて()かされたり、聞いた事には欲しい答えが返ってこず、さすがに少し辟易としてきた。 仕事の流れは大きく変わらないはずなのに、担当者によって大分負担が違うのはいかがなものか。 「新しい方はどうなの? 冴島君も同じ企画担当してるんでしょ?」 「うん、そう。なんかね、思っていたのとは少し違うけど、すごいよ」 「へえ……、すごい? なにが?」
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