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「みんな最初から覚悟はしてましたけどね。今回が最初で最後のデートだって」
「え、そうなの?」
「そりゃ、こんだけ何回も興味ないって言われりゃ嫌でも納得するしかねえよな」
「小嶺さんからアセクサ……ナントカっていうのも教えてもらいましたしね」
「ユキヤくん、アセクサじゃなくて、アセクシャルだって」
「ああ、それです、それ」
ハッチとユキくんのよくできたネタみたいだけど、3人がわたしのいないところで真面目な話をしていたのは意外だった。
「今でこそ、同性愛者も少しずつ理解され始めてるけど、アセクシャルはまだまだ知らない人の方が多いし、恋をしないっていうのは目に見えないから本人も自覚しにくいらしいんだよね。運命の人が現れたら恋をするかもって考えるから」
「そうですね。自分でもそうなのかなって思ってる時期ありました」
「けど、本人が興味ないって言ってるなら、周りがとやかく言う必要はないんだよね。ゲイの人に女性に恋しろって言うのは差別なんだから、恋をしない人に誰かに恋しろって言うのも差別になるって感覚は持っとかなきゃね。恋をしない自由もあっていいと思う。多様性の時代、なんて言うならさ」
恋をしない自由か……なんて素晴らしい響き。
わたし自身、いつかは恋をして結婚しなければいけない、結婚したら子どもを産まなければいけないと思い込んでいた。
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