地球侵略計画

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 ところが、少年は再びきっぱりと首を左右に振った。 「チョコはきらい。ぼうしをおくれ、くれないなら、うつ」  何とも手強い交渉相手だとチッペニ星人はUFOの中で唸った。たいていの地球人の大人は金か宝石をちらつかせればおとなしく要求に従う。子供だって甘い菓子かオモチャを渡せば我を忘れて大喜びだ。だが目の前の少年は一筋縄ではいかないようだ。菓子でも駄目だとすると、では、オモチャか。しかし、店内にオモチャは用意していなかった。  チッペニ星人は少年が手にする水鉄砲をモニター越しに見た。サーチライトによるスキャンの結果だとあの容器に入っているのは単なる真水でしかないのだから、まともに浴びたとしても何ら問題はないはずだ。UFOのボディは水が掛かったくらいでは腐食しない特殊な金属でできているし、その下の人間にしたところで濡れこそすれ人体には無害だ。  チッペニ星人はさっそく操縦席のボタンをいくつか手早く押した。すると、店主の男が大げさにおどけた表情をして両手を掲げた。 「わかったよ。おじさんの負けだ。勘弁しておくれ。その水鉄砲でおじさんを撃つというなら撃たれてあげよう。さあ、撃ってごらん」 「交渉決裂。発射」  少年が無表情のままそう口を開くと、銃口から液体が放たれた。それは水鉄砲などではなく、どんな金属でも溶かしてしまう液体を装填した溶解銃だった。溶解液をまともに浴びて、帽子型UFOもそれを被っていた男も瞬く間にドロドロに溶けてしまった。  少年が銃を下ろすと、掛けていた黒縁眼鏡のフレームの角に小さな穴が開いた。その中から細長いミミズのような体をしたミルミ星人が現れた。そして手にしていた通信機に向かって甲高い声で言った。 「小型宇宙船の製造技師と思われるチッペニ星人を一体、始末した。これより地下の軍需工場へと侵攻の予定。至急、援軍を要請する」  ミルミ星人はチッペニ星人と違い、眼鏡型UFOを使って人間の脳をコントロールして、暴力と恐怖によって地球を侵略しようと企んでいたのだった。ミルミ星の方がチッペニ星よりも遥かに高度な文明が発達しており、溶解銃の液体の成分も眼鏡型UFOの内部も、チッペニ星の旧式のサーチライトでは探知できなかった。  人間の外見と同様に、宇宙人達の乗る未確認飛行物体の形状もまた、決して見た目にとらわれてはいけないのだ。
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