始話 薄汚れた老人と貧乏少女

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始話 薄汚れた老人と貧乏少女

 私は知識も乏しく、靴磨きの仕事で、力が足りないからピカピカに出来ないと、解雇されたばっかりだった。  突然の解雇。手持ちのお金では満足にオシャレも出来なく、食べるお金に当てられる。  お下がりの服でフラフラと次の仕事を探す毎日。社会はどんなに冷たいのだろう、近くでは青年がガム取りの仕事をしている。都会の闇。  執着の努力は凄まじい、裕福そうな一般人を見つけると、青年は急に一般人に向かって走り出すと他のホームレスも走り出す。何をやるのか端から私は見ていた。 「食べ物を恵んで下さい!!」 「断る」 「そう言わずに、人助けだと思って」 「いや、断る」  すると青年が土下座をする。 「お願いします!!」  男はやれやれと手を広げると、財布から1プルーフを青年に渡す。青年は青筋を立てて睨み付ける。  一般人は通り抜けようとするが、好機と見た青年は、一般人に立ち塞がり土下座をして。 「お願いします」  私も貧乏だがかわいそうになったので、100プルーフを青年に渡すと。 「え? ありがとう」 「私も貧乏よ」  他のホームレスはカモを探そうと活動する。一般人は我知らぬと歩いて行った。私が青年に。 「お金が欲しかったら働く、食料は店屋のゴミ袋、寝床は店屋の段ボール、裏路地に拠点を置く、寒かったら段ボールを重ねる。ド貧乏でも生きる知恵を身に付けなきゃ、炊き出しの場所はあっちとこっち」  こんな生活でも、ひとつだけ微笑ましい人物が居たのだ。ある貴族が居る、私がユリシーザと呼ぶ方だ。  定期的にここら辺を根城にしている私達に、調理なしで食べられるキュウリやトマト、フルーツとかを持って来てくれるのだ、箱詰めで置いてく。  その施しを楽しみにしている。本当は自立しなきゃいけないのに、ここの南区で寝床を持っている私を含め、通路を占拠している私達は、彼をフルーツ王子と親しみを込めて呼んでいる。
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