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「5分いいか?」
「へ?」
びーさんが、初めて笑顔らしい笑顔を浮かべたのを僕はきょとんとして見つめていた。うん、と快諾しようとしたところ、既に僕の身体はびーさんの腕の中に閉じ込められていた。
あったかい。人ってこんなにあったかいんだ。互いの体温が溶け合うような感覚が、少し恥ずかしいものの気持ちが良かった。そう。まるで温泉に入っているかのような心地良さだった。
びーさんは無言で僕の肩に顎を乗っけて、僕の身体をひし、と抱きしめていた。だんだんと抱きしめる力が強くなっていく。しまいには、僕の頭をなでなでとし、背中を手ですりすり触ってくるものだから、緊張して口から心臓が飛び出そうになってしまった。
あれ。5分ってこんなに長いっけ? 内心わたわたとしながらびーさんの腕の中で小さく縮こまる。こんな状況でえーさんが戻ってきたらどうしよう。むっつりさせちゃうかな……。
「びーさ、えーさんが帰ってきちゃうから……」
耳元でこそこそ話したら、びーさんが今度は僕の耳に唇を近づけて。
「だからどうした」
そのまま、耳筋に舌を這わせてきた。ぬる、と首筋から耳朶まで舐めあげられ気が気ではない。うん。これ絶対からかってる。びーさん嫉妬しちゃったよ僕の馬鹿。なんかもっとこう、いい伝えた方があったろうに。そんな後悔を頭の中で繰り返していると、耳の中まで舌が侵入してきた。じゅぷじゅぷと泡立つ音に、背筋が震えた。なんだろ。これ。恥ずかしいのに、気持ちよくって。
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