3. 変化

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普通、店員と客という関係であれば、どれだけ仲良く話すようになろうがあくまで表面上の関係にとどめるはず。 その関係を破るのは軟派目的の人間くらいだろう。 でも、あいつはそんなタイプではないし、校内で女子から—そこそこの—人気もあるのは知っているから、それでも店員さんに行くってことは割とマジなんだと思う。 部活に励んで、勉強もしっかりやって、恋にも真っ直ぐで……これ以上ないくらいに青春を謳歌している浩二が少し、羨ましい。仮にその恋が散ろうが実ろうが——。 最近、より一層実感する。行動力はとても大事だ。 僕は行動したことによる後悔が怖くて、行動しないことによる後悔を選んできた。そんな消極的な思考が、行動も、ましてや性格も、自ら暗くしてしまったのかもしれない。 塾に行き始めて、なんとなく勉強する気が出てきて、気付けば『早く死ねたら』なんて考えることは減っていた。ゼロではないけど、偶に少し考えることもあるけど、でも今の僕は少しだけ、真っ暗な場所から明るみに出た気がする。 これも、元はと言えば浩二が些細な『動』を促してくれたおかげだ。あの時は、「タダなんだから一回受けてみたらいい」って軽い気持ちで決めたけど、普段からそのくらいの心意気でいるのが人生のコツなのかもしれない。 問題なのは、そこまで分かっていても、それを実行に移すとなると中々難しいってことだけど……。
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