尊い犠牲

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「うぅむ……」  地球からやって来たその男は、出されたシチューを一口食べるなり、眉をひそめた。  大きな長方形のテーブル席には、同じく地球からやってきた仲間が、ほかに四人腰をおろしている。彼らと目を合わせた。  全員が眉をひそめる、とまではいかないものの、ある者は表情を消し、ある者はこっそりとため息をついている。期待したほど美味でないことに落胆しているのは明らかだった。 「いかがですかな、我がナルボン星の料理は?」  にこやかな笑みを浮かべてそう(たず)ねたのは、テーブル席の中央に位置する男だ。ゆったりとした白い服を着ている。このナルボン星で、通商交渉を担当する司祭である。  彼はナルボン星生まれの、ナルボン星人である。といっても、耳たぶが少し大きいくらいで、地球人とさして外見は変わらない。  そのおかげで、地球から来た一行は、違和感をおぼえずにすんだ。また、テーブルを囲む者たちはみな、耳に小さな自動翻訳機を装着しているので、互いの意思(いし)疎通(そつう)に不自由はなかった。  彼らはいま、迎賓館(げいひんかん)のなかに設けられた食堂で、ディナーをいただいている最中である。 「まあ、そのぅ……」  司祭の横に位置する男が、言葉をにごす。最初にうなり声をあげた男だ。地球から来たグループの団長である。  団長は口ごもりつつも、言葉を続けた。 「なかなかに興味深い味ではあるのですが、そのぅ……」
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