1話

11/20
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ
   私が次に目を覚ました時、外の景色は藍色の深い夜であった。近くにある時計を見ると、短い針が"12"の数字を指していた。長い時間、寝ていたようだが…… 「(あれ……?)」  2人が帰宅をしているのか気になり、廊下へ顔を出すが静まり返っていた。もう、帰ってきて寝ているのだろうか?  そのまま1階へ降りて、朱華稲荷神社へ様子を見に行くことにする。私が茶屋の外へ出た時であった。 「(真っ暗……ん? 何あれ……?)」  茶屋を出て近くにある坂の下から、何か黒い影が1点に集まり人の形に……と思ったら、武士のような恰好でそれが馬に乗り、夜に包まれ、風を切るようにこちらに目掛けて近づいてくる。  待て待て待て、何で私の方に?何よあれは……! 「……ッ!」  私は慌てて、駆け足で坂の上へと逃げるが、馬の速さにかなう訳でもなく、追いつかれて……その武士の形をした影が、自ら腰についている鞘から刀を抜いて、私に振り下ろしてきたが、間一髪で避ける。その勢いで石畳へ崩れるように腰を落としてしまう。 「いっ……たい。え? い、嫌ッ‼」  私が顔を上にあげた時は遅かった。再び武士の持つ刀が私の首を狙って、振り……
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!