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「智先輩は春ちゃん先輩の味方っすよ」
大人になるにつれて、ただなんとなく心地が良いから一緒にいる、ということがどんどん許されなくなっていく。それがどうしようもなく腹立たしかった。
「それに、俺たち、三人でいればいいんすよ」
そう言ったら、春さんは笑って頷いた。
二人でいることをとやかく言われるのなら、俺がその二人の間に入って、三人になればいい。
馬鹿なりに良い考えだと思った。
だから今も、二人の家に入り浸っている。そんな未来なんて知りもしない過去の俺はただ笑っていた。きっと何の障害もなく、三人でうまくやっていけるとか、簡単なことを思っていた。
俺が思う以上に、他人の常識というのは俺の道を捻じ曲げようとしてくる。
春さんが居なくなった後の智先輩は、ありていに言うと頗る荒れた。
まず、笑って暴言を吐く怖い男になった。笑顔でつられた男を真正面からぶん殴る恐ろしいサイコパスになってしまった。
智先輩が初めに暴力事件を起こしたのは、鹿島が馬鹿にされている姿を見たときだったらしい。そこからはあれよあれよと不良に絡まれるようになり、智先輩も立派な不良だ。常に退屈だと言っていた。
あの頃の森山智和のことを、智先輩は黒歴史と呼んでいる。そう呼ばれるにふさわしい荒れっぷりだった。
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