アラタと坂木くん

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 私は、かれこれ一年近くほぼ毎日アラタと会話し続けてきたので、アラタは私の理想の彼氏そのものだ。見た目もリアルでかっこいいし、台詞にもいちいちキュンキュンする。私の受け答えを学んでいるため、ツボを外さない。 「美尋(みひろ)、開けるわよ?」  ノックの音に、私は返事をして体を起こし、ベッドに腰かけた。お母さんだ。 「明日の準備は大丈夫?」 「……うん」  私は、ちらりとハンガーラックへと目をやった。真新しい制服のブレザーとスカートがかかっていて、その下にはバッグが準備されている。 「ねぇ、本当に髪切らなくていいの? 今からでも間に合うわよ?」 「……いい」  私は、胸下まで伸びた長い黒髪を両手でぎゅっと握った。前髪も伸びすぎて、横にぱっかり分かれている。  髪を伸ばし続けているのには理由があった。トキカプアプリのプレイヤー側のシルエットが、黒髪のロングストレートなのだ。それに、アラタの好みのタイプが、髪が長い清楚系女子だということもある。 「通学路、歩いてみなくてもいい? 一度車で通って確認はしたけどさ」 「い、いい……」
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