MISSION1-0 あいつ、本気で私のことを殺しにきてるんだ。

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MISSION1-0 あいつ、本気で私のことを殺しにきてるんだ。

 一瞬、気を失った。  地面に叩きつけられた衝撃を受け身もとらずに、もろに食らったんだから当然の結果だろう。  しかも、その地面に叩きつけられる前に、世界7位の実力をもつスパイ、イヅカから腹にパンチを5発(結構マジで痛いやつ)を食らっているんだ。きっと、訓練前の私だったら耐えられなかった。  はぁ…………死にたくないよぉ………………。  心の内に浮かぶのは弱音ばかり。  まあ、つい最近まで、これから高校生をエンジョイしようとしていたんだから、これが普通なのかもしれないけど。  砂埃の奥でイヅカの気配がゆっくりと歩いてきている。手は土手を散歩している時みたいにブラブラし、足は天に舞いそうなくらい軽い。  くそっ……身体がすっかりリラックスしてやがる。私ごときを倒すくらい造作もないってことか……。まあ、その割には、気はビンビンと張ってるみたいだけど。  砂埃の奥でイヅカが笑った気がした。ヌチャッとした感触の悪そうな笑み。  顔の整い方に関しては、周りよりも群を抜いているし、きっとインスタとかにあげたら、フォロワーが数万とつくんだろうなぁ……。  私は地面に手をつき、ゆっくりと起き上がる。怪我を負った背中には、負荷をかけないように。その際に、【罠(トラップ)】と小さく唱えることも忘れない。  うっ…………頭が痛い。  脳からの危険信号か何なのか分からないけど、視界も段々とぼやけてきた。  砂埃の奥から緑色の頭をもった何かが、姿を現す。  仲間だったはずのものが敵に見えてくる。  ビンビンと張った殺気で空気が震える。  あいつ、本気で私のことを殺しにかかってるんだ。  うっ……。  また、頭が痛む。でも、今度の痛みは何かが違う。誰かから頭を内部から蹴られたような感覚。意識も朦朧としてきて、その誰かに私は体を乗っ取られたような気がした。  殺さなくちゃ……死ニタクナイカラ。
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