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シグルディは頷くと、急いで与一を担いで地面に降ろし横たえた。シグルディとカイマルズはどうやら先に与一が逃がしていた女たちの治療をしていたらしく、岩陰の奥にはゆっくりと眠る女たちが見えた。
「兄貴、いま、わたしの声は聞こえてますか? ちょっとばかし痛いかもしれませんが我慢してくださいよ」
与一が無言で頷いたのを確認すると、シグルディは与一の太ももの傷口の上から布を重ねて強く押し付けて圧迫した。
「うぅあぁぁあ"あ"あ!! ぐっあ!」
与一は再び襲ってきた強烈な痛みのあまり、横にいたシグルディを掴んだ。
「堪えてくだせぇ。傷口を今のうちに閉じねぇといけねえ」
そうしてシグルディはあの手この手で与一を懸命に手当てした。持ち物の布を惜しげなく使い、薬草の練り物を傷口に押しあてて止血した。その甲斐あって四半刻を過ぎたころには、血は止まっていた。だが、与一は麻酔なしで痛みに耐えねばならず、自然、その頃には体力を使い果たして気を失っていた。
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