止まった時の中であの日を思う。

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子供の飛び出しによる事故。 ある意味、よくある悲劇の一つで、不幸な事故。だからこそ、男の妻は自分を責め続けた。『何か出来なかったのかと』 そして行き着いた先が、タイムマシンで過去に戻り、子供を救うという時間犯罪。 その結果が、夫が妻を殺すという最悪の結末。 男にとって、いや、子を持つ親にとって、子供が可愛くないなんて事はあり得ない。代われるものなら、いくらでも代わってあげたいと思うものである。 だが、時の流れは決まってしまったのである。子供はトラックに撥ねられて死ぬのだと。 それを変えることは、許されない。いや、そもそも変える事は不可能。 ここで子供が助かれば、男の妻が、時間を飛び越えてこの時代に来ることはない。すると、子供を助けた事実は消え、結局娘は死ぬのだ。 ーー何度も説明したのに、本当に最期まで理解してくれなかった。 男は、それをバカだとは思わなかった。たまたま、自分はタイムパトロールの仕事に就いていたから理解が出来ただけ。そんな自分でも、過去を変えれたらと何度も思うのだから。 「あぁ、せめて、この時間が少しでも長くあれば……」 動かなくなった愛する妻と、これから動かなくなる最愛の娘。 もう、二度と会うことが出来ない、愛しい家族。 停止した時間の中で、男はただ永遠を祈った。 (終)
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