我らは滑稽

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 魔王様と勇者の決戦は、相討ちという結果に終わった。  四天王は俺以外重傷。あちら側も斥候の彼以外重傷だった。勇者側は「帰還」の魔道具で脱出し、魔王城にひとり残された俺は、甲斐甲斐しく三人の手当てをしていた。  俺だけが無事だったのは、別に強いからという理由じゃない。俺が傷を負わずに済んだのは、「幻惑」を専門とする魔族だったからだ。土壇場で上手いこと作った偽傷のおかげで、勇者たちを騙すことができた。  炎、氷、破壊、幻惑。四天王の中で唯一俺だけが戦闘タイプではない。真っ向勝負ができない俺は非常に肩身が狭かった。新参者の氷さんにすら舐められている始末。悔しいけれど勝てないからヘコヘコするしかない。ちくしょう、実力主義は残酷だ。  さて、傷を癒やした四天王たちは、さっそくこれからのことを議論した。  統治者たる魔王様亡き今、俺たちの領土も一気に荒れるだろう。我こそが次の魔王だと名乗りを上げる輩で溢れ出すに違いない。人間側も勇者を失ってしばらくはゴタゴタしているだろうが、いずれはこちらに攻め込んでくる。このままではどの道未来はない。 「禁忌の魔法とか……どうっすか」  禁忌の魔法。所謂死者復活の魔法だ。特殊な素材と莫大な魔力を使い、死者を生者に変える儀式。当然簡単にできるものではないが、四天王全員の魔力なら可能だ。やはり俺たちの王はあのお方しかいない。 「いーね。幻惑くんもたまには役に立つじゃん」 「でかい口を叩くなよ氷の。今回、お前が一番戦果を上げてねえんだぞ」 「は? やんのか炎野郎」 「構わねえぞチビ。相性ってもんを教えてやるよ」 「静まれ、炎、氷……私も幻惑の案に賛成だ」  何やら雲行きが怪しくなってひやりとしたが、破壊さんの一言で静まった。さすがに四天王最強の発言は強い。犬猿の仲である彼らは、ふんとそっぽを向く。  その後も話し合いを続け、三人は素材集めの旅に出ることになった。破壊さんは城に残り、魔王様の身体と城を守る。期限は一年後。先に集め終わった者から城に戻り、破壊さんと共に警備を受け持つこととなった。 「私はここを死守することを誓おう。頼むぞお前たち、すべては魔王様のために」 「おう!」  そうして、俺たちはそれぞれ魔王様復活の素材を集める旅に出た。
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