さざなみのはざま、しじま

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 彼と顔を合わせないまま過ごして数日が経った。気付けば窓の向こうから合図がするのをずっと待っている。ただ体感する時間は相対的にとても長く感じ、数日しか経っていないのに数年の時が経ったかのように、心が急激に老いていくのを感じた。  あんなに一緒に居たのに、居なくなればなったでどうにか生きていけてしまえるものだった。まるで自身の半身のように感じていたのに、どちらかが居なくても何事もなかったかのように世界は回っていく。そんな当然のことにも気付かずにいた。  夜になり、窓ガラスが叩かれる音がした。待ち望んでいたはずのそれを自分の願望が生んだ幻聴なのではと疑ったが、窓は繰り返し叩かれた。震える手でそっとカーテンと窓を開ける。  数日振りに見る彼の顔は少し憔悴しているように見えた。そうであって欲しいと言う願望がそう見せているのかもしれない。 「海に行こう」 「行かない」 「最後だから」 「……」  最後だから。彼の口からその言葉が出て、本当に最後になってしまうんだな、と心に鉛が落ちたような気になる。自分から終わらせると、決めたくせに。
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