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手紙
俺は今、母国の実家に手紙をしたためている。
留学先のアリスティール王国で出会った公爵家の次男と、見事番として結ばれた旨を報告する為だ。
公爵家の方々は皆 国王陛下の信任も厚い、素晴らしい方々である事。
伴侶となったエリオはとても穏やかな優しく賢い人で、俺をとても大切にしてくれている事、学園は卒業迄きちんと通う事。
数週間の内に今の仮屋敷を引き払うので、返事を下さるならばこれからはレニングスト公爵家に、と最後に記した。
俺は国に報告に帰るつもりが無いので手紙を書いたが、おそらく父に命じられて兄の内の1人が公爵家に挨拶に来るだろう。
一応は実家も公爵家で家格の釣り合いには文句は無い筈。
面倒な事は言ってきてくれるなよ、と思いつつ、封蝋を押し、召使いに手紙を託す。
αは先ずガタイありき、と思ってる筋肉至上主義の長兄以外なら誰でも良い。
エリオは未だ未発達だからな。
そう思ってたら、ほんの1ヶ月くらいの間にエリオの体格に変化が起きた。
俺より少しだけ高かっただけの身長が日に日に伸びて、細い枝のようだった腕や脚にしなやかな筋肉が付いて、頬や輪郭もシャープになり、首も少し太くなっちゃったりして。
オスみは感じるけど雄臭くはないという絶妙な美男子に仕上がってしまったのだ。
見る度に
(お、俺…こんな絶世の美男に抱かれてんの…?)
と、心臓が爆発して卒倒しかけるくらい幸せ絶頂だ。
既に学園内では俺達が番になった事を知らない者はいないし、王太子の事で俺やエリオに嫌がらせしてきた王太子の浮気相手共は、バツが悪いのか目が合うとコソコソ逃げていく。
俺達が王太子に全く気が無かったのに勝手にマウント取りに来てたのが今更ながらに恥ずかしいんだろうな…。
しかしあんなのにマジだったとかなら、君らの男の趣味もどうかと思うぞ。
でも本気で好きだってんなら、次の婚約者候補として名乗りを挙げるなら今だと思うがな。
今日も昼休みの昼食時に、俺とエリオは食堂で落ち合った。
どうしてもバースが違うとクラスも違うので、学年が上がっても到底同クラにはなれないという辛さ…。
エリオが良い男に育ち過ぎて俺は心配。
同じクラスなら、番がいても良いとかいう浮気希望の奴らから
エリオを徹底ガード出来るのに…。
サンドイッチを食べながら、はぁ…と溜息を吐くと、エリオに心配された。
「セス?大丈夫?具合い悪い?医務室行く?早退する?姫だっこする?」
「(姫だっこ??) あ、大丈夫大丈夫。」
え、そんな心配顔ですら憂いを帯びて美しいとか…ひぇ…俺の男、最高…俺の番、至高…今すぐ抱きてえ…。
エリオは納得いかない様子。
「大丈夫って…。
最近セス、前にも増して儚くて綺麗だから心配だよ。
セス、繊細だから…。
悩みが出来たら絶対言ってね?
頼りないかもしれないけど…。」
「…(繊細?)エリオ…ありがとう、好き…。」
「僕も愛してる…!」
エリオが相変わらず俺の事を繊細な男のように思っているのは何故なんだ。
散々 地の喋りも見せてるというのに不思議だ。
顔か?やはりこの顔か?
いやまあ良いんだけど。
2人揃っていると毎度こんな調子なので周囲から遠巻きにされ、割って入る者はいない。
唯一、俺に空気を読まずに話しかけてくるルクス様も卒業前で忙しいらしいし、ツッコミ不在なのである。
只、クラスだとピンだからちょっかいかけてくるバカがいるんじゃないかと気が気じゃないのだ。
でもま、そんな勇者いないか…
って感じで何時も落ち着くのだが。
が!
「おい!お前らか!!
アレスを裏切った上に婚約破棄して悲しませたって奴らは!」
本日は空気を読まずに割って入る勇者が現れた。
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