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しかしまだ寮の敷地内から出れていない。
渚くんから、また迷子になるといけないから手を繋いで行こう!と寮の正面入口前でいわれた。
しかし、自分の息子くらいの子供に手をひかれて歩くのは抵抗がある私だ。
――無言の笑顔の圧がすごい……
私の主介護者として今日は絶対に迷子にさせない!という熱意と意気込みをかんじさせるよ。
こんな風に心配させたのは自分の行いの結果だと諦める。少しだけ恥ずかしいけれど、手を繋いでいくことにした。
「じゃあ、よろしくお願いします……」
満面の笑みを浮かべる渚くんに、おずおずと手を差し出す。ガシッと渚くんの大きな手に包まれた。
鼻歌を今にも歌いだしそうなほど、さらにご機嫌になった渚くん。
ご機嫌な彼はショッピングモールのある方向へ歩き出し、私も早足で歩調を合わせるように歩く。
渚くんのその様子を見上げつつ、心の中で一人反省会をした。こんなにも、迷子にさせないっていう重圧を感じさせてすみません……と。
しばらくご機嫌な渚くんと森の中の道を歩いていく。目の前に、突然開けた場所が出現する。その先にきらきら輝くショッピングモールが見えてきた。
すごい。こんなところにあるんだ……。
私の眼前には、本当に街中にあるショッピングモールと遜色がないモールが広がっている。
本屋さんからおしゃれな服屋、インテリア雑貨屋さん、カフェやレストランまである。
金持ち学校の財力を余すことなく注ぎ込みました!みたいな仕上がりのところだった。
私が驚いている間に、渚くんはモール内のお店を手短に案内をしてくれた。
その話を申し訳無いが話半分に聞きながら、ついつい、休日なために賑わうショッピングモールの光景に目が離せ無い私。
とりあえず、買うものの大きさ等を考慮して雑貨屋に寄ってから渚くんオススメの服屋さんにいくことに――
雑貨屋さんではハンカチのお礼として消えもののプチギフトと替えのハンカチを選んだ。
社会人の知恵として、消えものの方が貰うほうの負担は少ない。
貰った品がいらなくても処分が簡単だから……。
あと念のため、人が使用したものを使いたくないかもと配慮し、替えのハンカチを付けといた。
渚くんにも、今日といつものお礼として何かをプレゼントしたいと伝えた。
最初は遠慮していた渚くんだけれど、暫く悩んだ様子を見せたら「お揃いのものが欲しい」と照れながらリクエストされた。
せっかくお揃いにするんだったら、何時も使えるものが良いなと考えた私。
その雑貨屋さんでは食器も扱っていたので、二人でお揃いのマグカップを渚くんに提案し選ぶことにした。
私は青色のマグカップを、渚くんは緑色のマグカップを選んだ。
私としては「お揃い」とか学生以来だから仲良くなれた証として嬉しい。
僕としてはこれが自分で買った初めての友達へのプレゼントだ。
まずもって友達と二人で出掛けるのも初めてだ……。
ふふっ!本当にここに来て良かったなぁ。
今日の目的のハンカチのお礼も買えて満足だ。次は服屋さんへ
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