好意をむけられて

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 『涼香さん、おはようございます。きょうは、やまと屋さんでわらび餅食べたら、猿投(さなげ)温泉の日帰り湯行こうと思ってますがどうですか? 入れない事情あったら言ってくださいね』 生理じゃないし、タトゥーも入れてない。一平はこうやって、細かいことも気遣ってくれる。文面から湧き出る一平のやさしさに小さく息をついた。  『おはよう。了解です、温泉入れます』 『よかった! じゃあ必要なものあれば持ってきてくださいね。タオルは無料で借りれます。ご飯もそこで食べましょう』 時刻は朝の6時半。一平はいつもこうやってだいたいのコースを知らせてくれる。服装選びもおかげで迷うことはない。  小さめのショルダーバッグに、ゆったりしたシャツワンピース。大ぶりのピアスを合わせ、お風呂セットを入れたサブバッグを持って部屋を出る。マンションの地下駐車場へ行くと、エレベーターをおりてすぐ、右斜め前に一平の車が見えてきた。  何度きいてもすぐ忘れてしまうのだが、えっと、えすゆーぶい? だっけ。大きな車で、よっこいしょと足を上げないと乗れない車。  一平はもう車に乗り込んでいて、カーナビを操作しているように見えた。私に気がつくと、すごく嬉しそうな顔で小さく手を振る。
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