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お兄ちゃんは昔から少し変わっている。太陽みたいに賑やかで、優しいお兄ちゃんの事は大好きだけど、喋ってるとちょっと疲れてしまう。
お兄ちゃんのパワーが凄すぎて、なんだかいつも自分の元気まで吸い取られてしまったような気分になるのだ。
「それで、どうしたの……?」
話題を変えるべく尋ねると、お兄ちゃんが『おお、そうだった』と思い出したように言う。
『日和、今週うちの会社で主催する音楽フェスのチケット、取れなかったって言ってただろ?』
「あ、うん……」
その事を思い出してしまって、落ち込みながら頷いた。今週の土曜日、お兄ちゃんが働いているイベント会社が、街の大きな公園で音楽フェスを催すのだ。
大好きなアーティストさんが出演するからどうしても行きたかったのだけど、うっかりチケットを購入するのを忘れていたせいで売り切れてしまったのだった。
「それがどうしたの……?」
力無く尋ねると、お兄ちゃんが何やら怪しい含み笑いを始めた。
『ふっふっふ。なんと兄ちゃん、日和のためにチケット手に入れちゃいましたー!』
「えーーー!」
『欲しいか?』
「ほ、ほしい! ほしい!」
会社だという事も忘れて、ぴょんぴょん飛び跳ねながら叫んでしまった。
『欲しいだろー? 欲しいよなー?』
「お願い、お兄ちゃん! お金なら幾らでも払うから……!」
『待て待て。可愛い妹からお金を取るはず無いだろ?』
「え、それじゃあ……!」
『しかーし! 一つ条件がある! お兄ちゃん大好き、って言ってくれれば、このチケットを譲ってあげよう!』
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