1st week

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1st week

 突然ですが、私は海外旅行に行った事がありません。行ってみたい国は多々あるけれど、英語に自信がないのと、一緒に行ってくれるような相手が居ないのも相まって、遂に日本から脱出したことのないままに26歳を迎えてしまいました。  でもいつか未来の旦那様と海の綺麗なリゾートへ新婚旅行に行きたいと思っています。オーシャンビューのホテルで溶けるような一夜を過ごして、それから朝は真っ白なシーツの中で、お互いにちょっと照れながら眼を覚ます。そんな素敵な朝を迎えるのが私の夢です。  ベタすぎる? いえいえ、ベタで良いのです。私は少女漫画のようなベタな展開が大好物なのです。  でもね、あのですね、確かにベタな展開は好きなのですが、まさかこんな現実が身に降りかかるとは普通に思わないです。一体どういうことなのですか、神様? 「……わー」  私、白花 日和(しらはな ひより)は目の前に広がる景色に茫然としていた。  目の前の大開口の硝子窓からは、気持ちのいい朝日がめいっぱいに差し込んでいて、ラタン調で統一された家具を照らしている。窓の外を見やれば広々としたウッドデッキが広がっていて、大きなジャグジーバスと座り心地が良さそうなリゾートチェアが2つ。  デッキを囲む塀が高いので外は見えないけれど、その向こうにはもしかして真っ青な海が広がっているのでは? と思うほどに、部屋中がラグジュアリーなリゾート感に溢れていた。  何が起きた? 神様がお仕事を頑張ったご褒美に、私をリゾートに連れてきて下さったの? でもちょっと待って下さい、神様! 私パスポートも持ってないです! 不法入国になると思われます!
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