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「たぶん、してる」
「はっ! たぶんって何! ま、あんたらしいか。ははっ」
「宇佐美くん、ブーケが……お花が潰れるから、そろそろ……」
そろそろ離れてほしい。好きもドキドキも自覚したけど、まだ身体がそれに慣れない。こういう、いきなりの密着は困る。
「そろそろ限界? 仕方ねぇ。お子様に合わせてやるか」
ぷるんっとした唇をアヒルっぽく尖らせた相手は、偉そうに笑ってから解放してくれた。
年下のくせに、とことん上から目線だ。さっきまで萎れてた当人とは思えない。
「ピュアなお子様なので、お手柔らかにお願いするわ」
でも、この子が萎れてた原因は私にあるから何も言わない。
「手加減なら、ずっとしてる。正月以来、俺は彼氏のつもりでいたけど、手ぇ出してなかったろ?」
あ、そういえば。
「なんとなく遠慮があった。あんたの口から『好き』って聞いてなかったのもあるけど、先輩後輩の枠に嵌められてるのが嫌だったんだ。だから、今日を待ってた。卒業式を」
「そうしたら、肝心の私が的外れな対応だったから、あんなことになったのね」
「そうだよ。振り回されっぱなしだ。お詫びに、今すぐちゃんと告白してほしいね」
「え……」
「『異性で一番』としか聞いてない。ほら、告白、プリーズ!」
無理。
「言えるだろ。——鮎佳?」
「……すき」
無理だけど頑張ってみた。届いただろうか。手にしたブーケに顔を埋めて呟いた告白は。
もしも聞こえなかったとしても、言い直しは無理。
心臓が口からまろび出そうな緊張って、こんな感覚なんだ。生徒会の副会長として全校生徒の前に立った時でも、ここまでの緊張はしてない。
無理、無理。世の中の彼氏彼女の皆さんは、こんなことを日常的にこなしてるの?
何それ、すごく尊敬する。というか、どうして宇佐美くんは無言? やっぱり聞こえなかった?
「……おれ、も……すき」
うわぁ。
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