4 花待つ、春のうた

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「たぶん、してる」 「はっ! たぶんって何! ま、あんたらしいか。ははっ」 「宇佐美くん、ブーケが……お花が潰れるから、そろそろ……」  そろそろ離れてほしい。好きもドキドキも自覚したけど、まだ身体がそれに慣れない。こういう、いきなりの密着は困る。 「そろそろ限界? 仕方ねぇ。お子様に合わせてやるか」  ぷるんっとした唇をアヒルっぽく尖らせた相手は、偉そうに笑ってから解放してくれた。  年下のくせに、とことん上から目線だ。さっきまで萎れてた当人とは思えない。 「ピュアなお子様なので、お手柔らかにお願いするわ」  でも、この子が萎れてた原因は私にあるから何も言わない。 「手加減なら、ずっとしてる。正月以来、俺は彼氏のつもりでいたけど、手ぇ出してなかったろ?」  あ、そういえば。 「なんとなく遠慮があった。あんたの口から『好き』って聞いてなかったのもあるけど、先輩後輩の枠に嵌められてるのが嫌だったんだ。だから、今日を待ってた。卒業式を」 「そうしたら、肝心の私が的外れな対応だったから、あんなことになったのね」 「そうだよ。振り回されっぱなしだ。お詫びに、今すぐちゃんと告白してほしいね」 「え……」 「『異性で一番』としか聞いてない。ほら、告白、プリーズ!」  無理。 「言えるだろ。——鮎佳?」 「……すき」  無理だけど頑張ってみた。届いただろうか。手にしたブーケに顔を埋めて呟いた告白は。  もしも聞こえなかったとしても、言い直しは無理。  心臓が口からまろび出そうな緊張って、こんな感覚なんだ。生徒会の副会長として全校生徒の前に立った時でも、ここまでの緊張はしてない。  無理、無理。世の中の彼氏彼女の皆さんは、こんなことを日常的にこなしてるの?   何それ、すごく尊敬する。というか、どうして宇佐美くんは無言? やっぱり聞こえなかった? 「……おれ、も……すき」  うわぁ。
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