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ニセモノの花 ※
――ニセモノの花でも、ちゃんと飾ればそれなりにキレイだよな。
そう言った彼のことばを、抱かれながら思い出した。
いつものラブホテル。
かび臭いベッドと小さな冷蔵庫とシャワーブースしかない、お決まりの、いちばん安い部屋。
「……声――出せよ……」
ベッドの上で、後ろから覆い被さってきた彼が、はだけた制服のシャツの下を荒々しくまさぐる。
尖ったその部分をキュッとつままれ、擦り上げられると思わず、こらえていた声が「ンンッ……」と漏れる。
「――すんげー、ピンピンに勃ってる、おまえの乳首――」
揶揄するように耳もとで囁かれ、恥ずかしさで気が狂いそうになる。
なのに、体の中心にあるぼくのそこは、もう隠しようもないくらい張り詰めていて――彼に気づかれるそのときを、待ちわびている。
やがて、
「……あれ――?」
わざとらしく声を上げた彼が、ぼくの制服のスラックスの前に手を回し、
「こっちももう、ピンコ勃ちかよ」
膨らんだ股間を、布の上からギュッと握りしめた。
「……ッ――!」
いきなり与えられた強すぎる刺激にのけぞったぼくをクルッとひっくり返し、仰向けにさせた彼は、真上からぼくを覗き込む。
――明るい金髪と、目じりの切れ上がったキレイな二重瞼。形のいい、薄ピンク色の唇が、ふっとかすかに歪み、
「乳首だけでこんなに感じんのかよ」
とあざわらう。
そして、ぼくの脚をカエルみたいにガバッと大きく開かせると、
「……もっと気持ちよくなりたかったら、自分で扱いてみせろ」
と命じる。
悪魔の啓示みたいなそのことばに、凍りついたぼくを、
「いまさら何恥ずかしがってんだよ。――見られたほうが感じるんだろ?」
鼻先で笑う。
「‥‥‥‥」
ぼくは何も言えない。
だって、それは本当で――その証拠に、ぼくのペニスは、いまにもパンツのなかで爆発しそうなくらい、硬くなっている。
制服のスラックスのジッパーを下ろし、パンツに手をかけたぼくは、つまみ出したペニスを左手で握った。
すでに先走りの液を涎みたいに垂らしているそこに、激しい羞恥を感じながら、自分で自分のモノを扱きはじめる。
見られている――そう思うだけでよりいっそう、快楽のジェットコースターは速くなる。
もう少しで絶頂に辿り着きそうになったそのとき、突然ぼくの右手をつかんだ彼が、
「‥‥‥そこまでだ」
と告げると、ベッドの下に落ちていた制服のネクタイを拾い上げた。
そして、カチカチに勃起したペニスの根もとをあっという間に縛り上げ、
「……そんなに簡単にイかせてもらえると思った?」
不敵な笑みを浮かべる。
スラックスのベルトを外し、前を開けた彼は、黒いボクサーパンツの中から、屹立したペニスをつまみ出す。
我慢汁で光った、大きい、猛々しい「雄」を感じさせる浅黒い肉棒に、ぼくは息を呑む。
ぼくの上に馬乗りになった彼は、いきなり容赦なく、ぼくの口にソレを突っ込んだ。
「……ッ……!」
喉の奥深く穿たれ、身悶えるぼくに、少しだけ腰を浮かせて呼吸する隙間を作ってくれた彼は、
「――ちゃんとしゃぶれよ」
そう命じる。
ぼくは、眦にいっぱい涙をためながら、彼の――ご主人様のモノに一生懸命、奉仕する。
イきたい。なのにイけない。
哀れなモノを縛られ、男の欲望をしゃぶりあげるぼくの姿は、傍から見たら、いったいどんなふうに映るんだろうか。
やがて、ぼくの口からぐいっと勢いよくペニスを引き抜いた彼は、ぼくを再び腹ばいにさせた。
ほっとしたのも束の間――制服のスラックスとパンツをまとめてずり下ろされる。次の瞬間、何のためらいもなく侵入してきた指の感覚に、ぼくは「……ンッ――!」と息を詰まらせる。
用意してあったローションを垂らした指で、ぼくの後ろをほぐしながら、彼はそそり勃った自分のペニスをぐいぐい内腿に押しつけてくる。とたん、放出を堰き止められたぼくの欲望が、開放を求めて疼き出す。
早く――もう早く――。
ぼくの心の叫びを見透かしたように、
「……すげぇ、ヌチュヌチュしてんぜ、おまえのここ――」
「……ウッ――あぁっ……ンッ……!」
前立腺とその周辺をピンポイントで攻められ、ぼくは腰をくねらせる。
「ケツ突き出してんじゃねぇよ――このドスケベ……」
ののしられる。そのたびに、ぼくの欲棒は、ピクッ、ピクッ、と嬉しそうに左右に大きく揺れる。
どうして、こんなに感じてしまうんだろう。
――ドMのぼくと、ドSの彼。
彼の名は、早川 紺。
早川くんと僕 ――浅海 里李の最初の出会いは、朝のラッシュの電車の中だった。
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