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頬をつねれば痛みもあり、空腹すら感じる。
「誰か、居ないのか!」
期待は全くしてないが、取り敢えず大声で叫んでみた。
すると意外な事に、何処からかこの声に応えるかのような物音が響き渡り、その音は徐々に此方に近づく。
誰かが居る。
だが、その物音を奏でていたのが人ではないことを理解した途端、恐怖が瞬く間に俺の心を支配していった。
4足歩行で歩く巨大な生命体。
その大きさは2階建ての建物より大きく、俺を発見したそいつは真っ赤な口をでかでかと開き、鋭い牙を突き立ててくる。
慌てて逃げるようにその場を離れると、先ほどまで寝ていたあのケースがいとも簡単に噛み砕かれた。
「ひっ‼︎」
恐怖から声が上ずる。
化け物は逃げた俺に向かい、また襲いかかって来た。
急いでこの場を離れなければならない。
そう頭では理解していても、体が思うように動いてくれない。
長時間眠り続けていた事で、筋肉が退化しているのか、それとも恐怖で足がすくんでいるのか、どちらにせよ俺は、結果としてあっけなく化け物に捕まった。
所々が割れたコンクリートの床に押さえつけられ、肺が圧迫し、痛みと苦しさで思うような呼吸ができない。
そして次には、俺の頭が化け物の口の中に入り首元に激しい痛みが走った。
暑い様な、寒い様な、そんな複雑な温度感と共に感じる激しい痛み。
だが、何故か悲鳴を上げる事は出来ず、かわりに口からは鉄臭い液体が溢れ出す。
そうだ、俺は食われてしまったのだ。
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