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碧から少し距離を取って歩く真琴は薄暗く不気味なほど静まり返るその場所が、既に自分の家から近いことに気づいていた。
加賀宮神社に繋がる二股に別れた道──
神社に暮らし始めて間もない頃、この二股道の人気のない方は通らないようにと、よくおじいちゃんに言い聞かされたものだ。
それからこの道は通ったことがなかったから、この二股道の一方がこんなに寂しい静かな場所だということを今まで知らなかった。
そして碧のおかしな行動に加え、あまりの周りの暗さと静けさに真琴の心の中には一気に恐怖心が増していく。
その恐怖心が体全体に回った時、真琴の足がピタッと止まり動かなくなってしまったのだ。
「ん。どうしたの真琴ちゃん? 蒼介くんのこと聞きたいんじゃないの?」
振り返ってきた碧は、そう声を掛け少しづつ真琴に歩み寄ってくる。
そんな碧に恐怖心を抱きながらも真琴は再度、蒼介のことを尋ねてみたのだ。
「……あ、碧君っ!
こ、ここまで着いてきたんです。そろそろ蒼介さんのこと、お、教えて、ほしいっ」
その言葉を聞いた碧はいつもの優しい顔で微笑みながらも突然、真琴の両腕を掴んできたのである。
「痛っ…」
「そっかぁ。真琴ちゃんは、のこのことこんな所まで来ちゃうぐらい蒼介くんのことが大事なんだねぇ──」
「あ、碧く……ん! は、はなしっ……」
「なんかムカつくんだよなぁ──っ!!」
その途端、掴んでいた真琴の両腕を突然自分の方へ引き寄せると、そのまま草の陰に真琴を押し倒してしまったのである。
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