恋人であるということ

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お風呂から上がった私は特にすることもなく、ソファーの上で体育座りをしてナオくんの帰りを待っていた。 ナオくんの晩ご飯の用意をしようと思っていたけど、休憩時間にまかないを食べてくると言っていたので、必要なくなった。 テレビも、観ても内容が頭に入ってこないので点けていない。 ただひたすらボーッと座って待っていると、 ――ピンポーン…… インターホンのチャイムが鳴った。 慌てて玄関に向かうと、 「ゆづー、開けてー」 扉の向こうから大好きなナオくんの声。 鍵と扉を開けると、 「ゆづ!」 目が合った瞬間、ナオくんは嬉しそうな笑顔を浮かべて、玄関に入るなり私を思い切り抱き締めた。 「ゆづが俺の部屋にいる……」 「呼んでくれたのはナオくんなんですけど」 ナオくんの胸に顔を埋めたまま、思わずツッコミを入れてしまった。 「お風呂、追い炊きしてくるから離して」 「……おかえりのキスはなし?」 悲しそうに私を見つめるナオくんに、私は言葉を失う。 え……何、この可愛い感じのナオくんは? こんなナオくん、私は知らない。
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