フォロワー

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フォロワー

 歪んだ月が時折、薄い雲に隠れる夜だった。 「ミルクが、どうしてあんな奴と……」  その人物はミルクと老人を尾行して風月荘の前までやってきた。彼女の熱心なフォロワーだ。――推し、なんてものではない。彼女はボクの、いやボクだけの女神だ!――フォロワーに言わせればそういうことになる。 「こんなところで何をするつもりだ」  夜のデートをするにはおかしな場所だった。いや、デートでないことはわかっている。その老人が、その日、ミルクが訪ねたぼろアパートに住む老人だと知っていた。年齢差を考えれば、2人が恋人同士のはずがなかった。  植え込みの陰に隠れ、一段高い出入り口の前で向き合う2人を見守った。イライラが募る。まるで素人劇団の下手な舞台を見せられているような気分だ。 「幽霊はワシの兄嫁だ」  太い声がして、老人がミルクの身体を無理やり抱きしめた。 「ボクのミルク……」嫉妬に奥歯がギリギリ鳴った。 「キャッ!」  彼女の声が胸に突き刺さる。いつも動画サイトで言葉を交わす彼女が押し倒されていた。頭にカッと血がのぼり、立ち上がりかけた。それを押しとどめたのは、ミルクのワンピースがめくりあがり、露わになった白い太腿だった。そこに目が釘付けになり、足は大地の一部と化した。
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