9人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
魔女は〝落し物〟を前に大いに悩んでいた。
何せその〝落し物〟は見るからにまだ歩けも喋れもしない人間の赤子で、それだけならまだしも僅かに生える髪は輝く白銀で、開いた瞼から垣間見える瞳は、見間違いでなければ、金。
それはこの間滅んだという国の王族に特有のものだったはずだ。
これを拾えば相当面倒なことが起こることは火を見るよりも明らかである。
静かに暮らしたい魔女としては面倒ごとはごめんだ。
面倒に巻き込まれるのはごめんであるが、しかしかといってこのまま赤子を見捨てれば遠からず死ぬことはわかりきっている。
そして己の性格を考えれば放っておけば死ぬとわかっている赤子を見捨てるなどすれば、今後百年はこの光景を夢に見続けることは想像に難くない。
魔女はこれから起きるであろう面倒ごとと、今後百年の悪夢を天秤にかけて、ため息をつくと赤子を拾い上げた。
最初のコメントを投稿しよう!