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というのも、僕の父上は王立黒騎士団の遊撃隊副隊長で、昔、紫焔獣に襲われたマリエッタの父上を助け、傷を負った過去がある。
僕の父上は"よくあることだから気にする必要はない"とマリエッタの父上に言ったそうだけれど、マリエッタの父上は恩義を感じているらしく。
その日を境に両家の交流は深まっていったという。
騎士階級である僕と、侯爵家の令嬢であるマリエッタ。
僕らが幼い頃から頻繁に顔を合わせていたのには、そうした背景がある。
(マリエッタには、悪いことをしちゃったな)
僕のせいで、彼女は五歳という幼さで婚約の自由を奪われた。
これから誰を愛そうと、僕との婚約を破棄しない限り、僕の妻になるしかない。
(かわいそうなマリエッタ)
だから、せめて。
せめて彼女が少しでも僕を好いてくれるように、立派な男になってみせよう。
強さはもちろん、世界の誰よりも愛して、大切にして。
たとえ僕を一番に愛せなくとも、僕と結婚して、悪くなかったと思ってもらえるように。
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