4万年後の地球

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4万年後の地球

「隊長、ようやくですね」 宇宙服を着た男が語りかけると、隊長と呼ばれた人物も答える。 「ああ、長かったな。本当に長い道のりだった」 宇宙空間からふたりが見下ろしている先には、地球が存在している。ただし、我々が知っているような青々とした星ではない。ドロドロに溶けた溶岩の吹き上げる炎の星である。 「ここから先が大変だぞ。何万年、あるいは何億年かかるかもしれん」と、隊長。 「それでも、やらねばならぬのですね」と、部下。 「ああ、それが我々人類の責任であり、罪滅ぼしでもあるのだ」 「この星はまだ生まれたばかりの赤ん坊のようなモノなのですね」 「遠い昔、地球では『植林』という行為が行われていたと聞く。自分たちが伐採した木に代わって、新しく苗木を植える行為だ。苗木が大木に育つまで何十年もかかったそうだ」 「何十年?わずかな時間ですね」 「今の我々からすればな。だが、当時の人類からすれば、果てしなく長い時間に感じられただろう。それでもやり通したのだ。苗木を植えた人間が死んでも、次の世代へと遺産を残せるように、と」 「僕らがやっているのも同じコトなんですね」 「そうだ。愚かな人間たちが地球を滅ぼしてから4万年以上の時が経過した。ようやく我々はこの星を再生できるだけの技術力を手に入れたのだ」 漆黒の空間に浮かぶオレンジ色の星は、オギャアオギャアと鳴き声を上げるかのごとく、激しく炎を吹き上げ続けていた。
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