白い箱../榊 柊人

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白い箱../榊 柊人

薄暗く、煙草の臭いが充満したこの部屋。 ここの部屋に来るたび頭が鈍く痛む、早めに報告を済ませ出て行こう。 椅子に座っていた男がゆっくりとこちらに振り向く。 「榊くん、例の検体2つはどうだい?」 「先日、pH0>PH7の実験で新たな事実が判明し、より価値が高まったかと思います」 「計画への参加も一歩近づいた、と言う感じかな?」 「はい、pH0>PH7は参加可能になるかと思います」 一服した後、目の前の男はゆっくりと口を開く。 「pH7<pH14の方はどうだい?あまり良い話を聞かないが」 「……現在もこれと言った結果がありません。  pH0>PH7と同様、濃度変動や変異があればかなり利用価値は高まるとは思いますが……」 「、か。」 「突然変異、変動する可能性もあります。  女型ということもあり、扱いが難しく細心の注意を払っている状態です」 「失敗作といえど、女型。  計画への参加は難しくても、からね、死なせはしない様に」 「もちろんです」 「今日はもう下がっていいよ」 「失礼します」 頭を下げ部屋を後にする。 服に染み付いた煙草の臭いに顔をしかめながらも、白い箱へと歩みを進める。 、か。
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