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「で、一ノ瀬さんって付き合ったらどんな感じなんですか?クールそうだけど、やっぱり店長には甘ーい感じとか?」
「……クール、ではないかな」
口数は決して多い方ではない。
でもそれは私も同じで、だからか波長が合うのだ。
彼のことを冷たいと思ったことなんて、一度もない。
むしろ、優しすぎるくらい。
「ですよね。一ノ瀬さんからすれば店長は年上だけど、かわいくて甘やかしたくなるんでしょうね」
「そんなことはないと思うけど……」
「だって真衣から見ても、店長はめちゃくちゃかわいいですよ」
「……ありがと」
「ほら、そうやってわかりやすく照れちゃうとことか。一ノ瀬さん、たまんないでしょうね」
その後も真衣ちゃんからいろいろ質問攻めされたけれど、はぐらかしながらどうにか逃げ切り、仕事に集中した。
そしてその日の午後1時を過ぎた頃、彼が店に姿を現した。
大体彼は、昼の1時頃かもしくは仕事を終えた後に店に寄りコーヒーを飲んで帰っていく。
付き合い始めてからは店に来ることはなくなるのかと思っていたけれど、彼は付き合う前と変わらず立ち寄ってくれていた。
そして変わらず、カウンターの中で働く私の目の前の席に座ってくれる。
些細なことかもしれないけれど、何も変わらずにいてくれることが、私にとっては嬉しくて仕方なかった。
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