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「なに、これ……」
まるで、映画の中にいるみたいだ。
頭の中が混乱する。
雪ちゃんは、タイムマシンなんて言っていたけど……。まさかね。
一体どうなってるの。
私は早足になって、めちゃくちゃに道を歩いた。
気が付けば、すっかり夜になっている。
暗い空には鼠色の雲が流れ、道の両脇にぽつぽつと灯るルビー色の街灯は、なんとなく頼りない。
考えてみたら、移動しないほうがよかったのかもしれない。
雪ちゃんだって、きっと私を探しているだろうから……。
すがるような思いで、もう一度スマホを取り出す。暗い液晶画面が、心細そうな表情の私を映した。
明るいほうにむかって歩くうち、ごちゃごちゃしたところに出た。
高架下というのだろうか。
立ち食蕎麦や居酒屋などの屋台、靴磨きの店などが、ところ狭しと並んでいる。
風に乗って漂ってくる、なんとも言えないおいしそうな匂い……。
そのとたん、ぐう、とお腹が鳴った。
そうだ。
ハラが減っては戦ができない。雪ちゃん探しもできない。
私は、立ち食い蕎麦の暖簾をくぐった。
カウンターの前、グラついたまるい椅子に座る。
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