サイコパスと呼ばれて

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「人間だけは剥製にしちゃダメよ」  貴代は洸太が子供の頃から口を酸っぱくして注意し、学校で何度か揉め事を起こして問題になったが、三十五歳まで警察に逮捕される罪は犯してない。 『知らないだけで、人を殺した可能性もあるのよ』と娘から注意されているが、貴代は乳母として育てた洸太を信じ、いつか普通の社会人として歩み出すと願っている。 「貴代さん。僕は両親が亡くなってからもひきこもらずに高校を卒業した。大学に行かなかったのは、生徒や先生を皆殺しにする悪夢にうなされていたからですよ」 「わかってます。コウタさんは優しい人で、手先は器用なんだから、遺産のあるうちに仕事を見つけたらどうですか?今は立派なひきこもりですわよ」 「まだ貴代さんのお手当は十分ありますので、お金のご心配なく」 「私のことはいいの。このお屋敷を手放すことになったら、亡くなったご両親も墓場で泣くことでしょうね」  高台にある三階建ての由緒ある豪邸であるが、修繕する資金はなく庭も外壁も荒れ放題で不気味な洋館になっている。 「縁起の悪い事は言うな。親の事に触れられると、僕がキレるの知ってるだろ。貴代さんでもマジで怒りますよ」  洸太は棚の上に置いてあったナイフを手にして、小言を並べ立てる貴代を睨んで息を荒げ、両親が自分の事で何度も涙を流し、最終的には自殺した記憶が脳裏を過ぎり苦しくて耐えらない。
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