カムイ岬の雪 九、

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カムイ岬の雪 九、

 以降、彼の目には、全て絶望してこの冬の海で散っていく者が、長い長い歴史を経て映っていた。  その歴史の中で、やはり戦に敗れて散っていった狼がいた。  散っていった狼と、同じく散っていった男。  その魂と魂は、やがて一つの姿になった。  岬に向かって嗚咽するかのように遠吠えする狼として。  狼は海に向かって、叫んでいた。  悲しき、そして哀しき叫び。  まるで、目の前に連れ添った恋人か妻がいるかのようだった。  その応えの無い、叫びであった。  永遠に答えの無い、哀しき叫びであった──。 (了) 5eb39965-1ac4-4a0c-acac-86964dbf5fe0
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