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師匠と弟子
「師匠って一体何なんですか?」
僕は窓際のヘリに座って本をぺらぺらとめくっている師匠に向かって聞いた。本をめくっているが絶対に読んでいないと自信を持って言える。
「私? 私は大学生であり浪人生であり、社会人であり、姉であり、先輩であり、先生であり、女性であり、仙人のような師匠だよ」
師匠はにやりとシニカルに笑いながら言った。
「何言ってるんですか?」
呆れながら僕はため息を吐く。
「あと、私は可愛い」
自分の顔を指さしながら言った。窓から差し込んでくる日差しが師匠の顔を明るく照らす。綺麗に整った顔に愛嬌のある笑顔が浮かんでいた。
「知ってます。悔しいですけど」
「存分に悔しがると良い」
にしし。と口に出して師匠が笑う。
「質問に答えてませんよ。結局、師匠って何なんですか」
「それは君が知っているよ」
「よく分かりません。師匠にとって僕はどういう存在なんですか?」
少しの脅えと期待を込めながら僕は聞く。
「さぁ?」
とぼけた顔で師匠は答える。答えを知っていながら教えてくれることは無い。いつだって師匠はそうだ。
「師匠にとって僕は一番大切な人ですか?」
僕の望む答えは返ってこないと分かっていながら僕聞く。惚れた弱みというのは本当に困ったものだ。自嘲気味に笑う。師匠はそんな僕の様子を見ながら楽しそうに言うのだ。
「さぁ。それは分からない。でも、私はいつどんな世界でも君のとなりにいるよ」
これは師匠と僕の話だ。ありとあらゆる世界の並行した師匠と僕の話である。
それを語り聞かせよう。
暇な人は付き合ってくれ。
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