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「寒いよぉ」
とっくに陽は落ちて、暗い森の中を彷徨う。本当なら、夜は動かずに野営するべきだ。頭では分かってる。でも、今は“止まる“という事をしたくなかった。
何処に向かっているかも分からない。ただ、あの場から、少しでも遠くに行きたかった。
「ハァ、ハァ。ここは、どこ?」
いつの間にか走っていて、気付いたら、街道を外れていた。昼間の明るい姿と違って、夜の森は暗く、どこか閉じ込められてしまいそう。
それが怖くて、また、走り出す。道がわからなくても、走っていれば抜けられると信じて。
おかしいな。駆け出しとはいえ、自分だってトレジャーハンター。夜の森なんて何度も入ってる。だのに、今回は、ちょっぴり心細い。
……嘘だ。とっても心細くて、寂しい。
寂しいのは、嫌だ。胸がキュってなって、悲しくなるから。
悲しいのは嫌だ。一人ぼっちなのを思い出しちゃうから。
里が襲われて、家族も友達もいなくなっちゃったのを思い出しちゃうから。
……それから、ずっと独りなのを思い出してしまうから。
「キャッ!」
木の根に足をとられ、派手に転んだ。
擦りむいた膝から血が滲む。膝だけじゃない。手だって痛い。それに、顔もぐちゃぐちゃだ。ぐちゃぐちゃで、怪我をしたんだ。
だから、だから、頬が濡れてるんだ。
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