六章

13/14
10488人が本棚に入れています
本棚に追加
/214ページ
「していいの?」 「うん…」 半分以上残っているビールを目の端で捉えながらも、俺は飛鳥に唇を重ねていた。 「んっ…」 焦っているのだと思った。 多分、飛鳥は朝倉さんに好意を持っている。朝倉さんだってそうだろう。 俺が引けばすぐにでも付き合うであろうことは想像に難くない。 と、同時に嫉妬心が溢れ出す。 “練習”と言った飛鳥の目には朝倉さんしか映っていない。それがどうしても、 「ムカつく、」 「…え?…」 唇を離すと、彼女の唾液で光る唇に親指を這わせた。 と、同じタイミングでテーブルの上に置かれた飛鳥のスマートフォンが振動した。 電話ではないようだが、ディスプレイに表示された名前を見てしまった。 飛鳥もスマートフォンのディスプレイに目をやる。 「あ、…」 朝倉さんの名前が表示されている。 「…きゃ―っ、んん、」 小さく声を上げる彼女の肩を掴み強引にキスをしていた。 ここまで来ると止めることは不可能だった。呼吸を乱す彼女から顔を離すと手首を掴んで無理に立たせた。そのまま彼女を抱き上げて寝室へ移動した。 「椎名君…」 初々しい反応は俺の中の欲を煽る。
/214ページ

最初のコメントを投稿しよう!