Lv.1 すめらぎ みあ

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Lv.1 すめらぎ みあ

時々、起床と共に頭痛が2~30分ほど続く事があった為、親に相談し父親の友人である医師に看て貰う事になった。 「脳に腫瘍・・・ですか?」 彼女は今、病院で家族と共に診断結果を聞き、あまりにも現実味に欠ける内容にピンとこないまま脳のCT画像を見つめていた。 名前は(すめらぎ) 美亜(みあ) 背中まで伸ばした艶やかな黒髪、前髪はパッツン、二重の瞼、黒目の大きな瞳、身長158cm、やせ形、スリーサイズは上から80 55 81 色白 誰から見ても美少女というに相応しい外見、頭脳明晰、運動神経抜群と付け入る隙が無い。 取り乱す両親とは対照的に、美亜は冷静に医師の言葉に耳を傾ける。 今現在、この小さな腫瘍を取り除く手術が可能な名医が日本にはいないらしく、緊急性が低いこともあり1年ほど待たなければならないという話だった。 過保護な父は「金ならいくらでもあるから、どうにか早くならないものか?」と医師に詰め寄る。 スメラギ・エンタープライズ・・・日本ではトップのVR関連企業であり世界的に見ても第3位の超一流企業。 彼女は所謂社長令嬢であり、家庭環境までも恵まれていた。 高校卒業後はオーストラリアに留学する事も決まっており「留学が遅れてしまうのかしら」と、自分の身体より先々の事に思いを巡らせる。 頭痛が酷い時に飲む薬が処方され、また来月検査の予約をして病院を後にした。 国産高級セダンの窓から、流れ行く街の風景を眺めながら、しきりに励ましの言葉を掛ける両親に対して「うん」「大丈夫」と、当たり障りない返答をする。 豪邸と呼ぶに相応しい自宅に帰った後、自室で脳腫瘍に関する情報を自ら調べ始めた。 もし、死んでしまったら・・・これから先に予定していた事ができなくなる。 今、最優先するべき事は何だろう? 17年間生きてきて、特にできてない事は何だろう? 自問自答の結果、さほど時間をかける事なく答えは見つかった。 美亜は両親に思いを伝える為、居間に足を運ぶ。 そこには両親と、1つ年下の部活から帰ってきた弟が遅い夕食をとっていた。 「お父様、お母様・・・私、恋をしたいと思ってます」 あまりに突拍子も無い美亜の一言に、父である皇 吉太郎(きちたろう)は口に含んでいたウィスキーを吹き出してむせ返った。 「ぐふぁ、ぐふおぁー!げぼ、げぼぼぼぼ!?き、気管に入ったぁ!?」 身長160cm、体重75㎏、髪が薄くなってきた50代のふくよかな一国一城の主は某漫画の悪役が経絡秘孔を突かれたかのように悶えながら床を転がり。 着物姿の元モデルで身長166cmの40代には見えない美貌の母親、皇 和歌子(わかこ)は、そんな夫を無視しておっとりした口調で美亜に問いかける。 「美亜は、好きな方がいるの?」 「今はいないわ。だから、明日から探してみようと思っているの」 そんな姉の言葉を聞き、母親似で身長172cmの弟、皇 扇郎(おうぎろう)はサラサラした髪を軽くかきあげ、他人事のように言った。 「姉ちゃんが恋ねぇ・・・良いんじゃね?ちゃんと避妊すれば」 そんな息子の言葉に対し、吉太郎は転がりながら飛び上がり食事中の扇郎に体当たりをかました。 「ナニぬかしとんのじゃ、クソガキァー!」 吉太郎の怒号と共に扇郎が食べていたカレーライスが辺り一面に飛び散る中、母と娘は会話を続ける。 「美亜、そういうのは自分でしようと思ってできるものではないのよ?」 「うん、私もそう思う。現に今まで生きてきて誰かに恋心というものを抱いた事は一度も無かった。きっと、私の手術は上手くいくと思うけど・・・万が一の事を考えたら、そういう経験をしておきたいって思ったの」 「まぁ、あなたの事だから色々とプランがあるのでしょうけど・・・」 「ナニさらすんじゃ、ハゲデブオヤジ!」 「誰に言っとるんじゃ、クソガキァー!」 「煩い、だまらっしゃい!」 罵り合う父と子を一喝し、和歌子は何事も無かったかのように娘との会話を続けた。 「私は反対したりはしないわ。そもそも、扇郎は放任している訳だし。扇郎、あなた彼女いるわよね?」 「うん?今は、3人かな」 悪びれる様子も無く、扇郎はカレーまみれの服を着替えながら答える。 「和歌子さん、だが女と男では恋愛の重みが違うんじゃ・・・」 吉太郎は苦笑いを浮かべながら和歌子に言い寄るが、和歌子は冷たい視線を向けた。 「吉太郎さん、私とお付き合いしていた時に何回浮気しましたっけ?」 ぐうの音も出ない吉太郎・・・和歌子は再び、美亜に話しかける。 「恋をするのは、とても難しいし恋をしてからも大変な事は沢山あるの。ましてや、あなたは手術を終えたらオーストラリアに留学するのだから、恋人ができたとしてもお互いに辛い思いをするんじゃない?」 「うん・・・でも、それがわからないの。恋をすれば合理的な考えもできなくなったりするのかしら?」 「そうね、そう言う経験が無いのも問題かも知れないわね。これも美亜にとっては勉強の一つなのかもね?ただ、一つだけ言わせてもらうわ」 美亜に向ける、おっとりした優しい口調が一変しドスの効いた声で吉太郎を睨み付けながら言う。 「恋愛の重みに女だとか男だとかは、関係無いわ!」 普段は夫を立てる良き妻である和歌子だったが、結婚前にあった色々な事を思いだし、何十年経った今、怒りが振り返したのである。 吉太郎は和歌子の機嫌を取る為、美亜の恋人作りを表向きは了承し、カレーまみれのリビングを掃除せざるを得なくなった。
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