理想の妻像とは

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 そんな一面を見ると、親近感が湧いたりもするから不思議だ。彼と私では世界が違い過ぎてわかり合えるところも少ないように感じているけれど、それがただの思い込みかもしれないと思わせてくれる。 「素敵な部屋を手配していただいて、ありがとうございます」  しょげた顔の彼についこちらから声をかけると、「どういたしまして」とすぐにいつもの調子に戻る。切り替わりの早さに気が抜けて、くすりと笑った。 「お忙しいんですから、明日でもよかったのに。今日もまだ帰れないんですか?」  今はもう二十時を過ぎている。一区切り、とさっき言っていたということはまた仕事に戻らなければいけないということだ。 「ここの支配人とまだ少し話すことがあってね。時間がすれ違ったおかげで七緒さんに会う時間が出来たんだけど。ちゃんと話がしたかったから」 「話ですか?」 「契約書のことで」 「あ」  契約書と言えば、婚姻契約書のことだ。忙しそうにしていた二カ月間だったが、ちゃんと考えていてくれたらしい。  彼と一緒に考えた内容を思い出しながら、コーヒーをローテーブルに置いて背筋を伸ばす。 「友人の弁護士に相談したんだけど、あの内容じゃ公正証書はまず許可が下りないそうだよ」
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