エクストリーム

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 地雷やC4爆弾などが仕掛けられていないよう祈りながらそろそろと床を這うとすぐに壁に行き当たったので、それづたいに立ち上がった。  自分が閉じこめられているらしい部屋は、四方の壁も床と同じでこぼこの素材でできている。弾力や脆さは感じないものの触感はやや柔らかい。  光の一切差さない部屋を探りながら、混乱する頭を懸命に整理してみた。どうやら家入さんと一緒に拉致されたところまでは現実で、僕一人がこの推定三畳ないし四畳半ほどの部屋に閉じ込められているようだーー出入り口がどこなのか、そもそも部屋の外部と連絡を取れるのかどうかすらわからない。 「ラン!いるのか?ラン!」 「家入さん!どこですか!」  手当たり次第に壁を叩いて叫んでみたが、反応はなかった。しかも何か行動をするたびに正体不明の強烈な違和感がついて回るーーその原因はしばらくしてわかった。  この部屋は完全な防音仕様らしく、自分の発した声や音が手応えも無しにことごとく吸収されてしまうのだ。  耳を澄ましても外の様子がわからないばかりか、静かすぎて早鐘のような心臓の鼓動や荒い呼吸音、思考のために脳内を駆け巡る血流音までが二倍、三倍以上に増幅されて聞こえてくるような気がーーいや、実際そうだ。人生で初めて味わった感覚だ。気持ち悪い。 「もしかしてここは……無響室?」  無響室というのは人工的に創られた「〇デシベル」の環境だ。
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