Diary2:調査

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 胸中では大嵐。口を開けば証拠も揃っていないのに、口汚くるりとの不貞を罵ってしまいそうだったから、起き上がって何故早く帰ってこなかったのか、何処で何をしていたのか、等と責めるのは止めた。眠ったふりをしておこう。  リビングの方で少し音がしていたが、やがて聞こえなくなった。しかし寝室にはやって来ないので、多分風呂に入っているのだろう。  私は素早く起き上がり、彼のスーツやら鞄に何かしらの不貞証拠が無いかを探す事にした。スマートフォンは洗面台の所にあって無理だろうから、それについては早々に諦めた。すりガラスに自分の影が映ってしまうからだ。  それより、鞄の内部やスーツのポケットを探ってやろうと思ったのだ。今がチャンス。  忍者さながらに音を立てずリビングへ滑り込み、そっと辺りを見回した。  スーツはここで脱ぐ時もあれば、直接脱衣所で脱ぐこともある。私がもう眠っていると思ったからだろう。直接風呂場へ行ってしまったようで、スーツが脱ぎ散らかされている形跡は無かった。  椅子の上に無造作に置いてあるくたびれかかった黒色の革鞄に、悪びれることなく手を付けた。あっちが不貞を働いているのだから、と自分に言い聞かせ、罪悪感は頭の隅へ押しやった。  中身にざっと目を通すと、様々な不動産関係の書類、何かしらの資料や書類が収められている封筒、ペンケース、名刺入れ、今日の朝忘れたと言って取りに帰って来た手帳が主な持ち物だった。  内ポケットなんかにレシートが入っていれば、と思って鞄の内部を更に捜索した。ジッパータイプの内ポケットを開くと、見つけてはいけないものを見つけてしまった。  手にした瞬間、鳥肌が立った。
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