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〈肉まん大好き〉
パヤッパヤッビュイチュワパー。
「はい、本日のテーマは『お正月なんて大嫌い』、次の方はどんな相談事でしょうか? こんばんはー」
「こんばんは」
「まず、お名前をお聞かせください」
「〈肉まん大好き〉」
「はははっ、僕も肉まん大好きだよ。で、どんな相談事でしょうか?」
「俺、アパート住まいなんだけど、お隣に30代の女性が住んでいて、その人が時々、おすそ分けで、煮物や汁物をくれるんす」
「ほうほう、いいねぇ、ご近所づきあい。最近はめっきり少なくなったと思うけど」
「それがですね、はっきり言って、美味くないんすよ。去年のおせち料理は最悪でした。今年もくるかと思うと心配で」
「はははっ、それは災難だね。でも、相手の方には……」
「ええ、もちろん、『美味しかったっす』って、容れ物を返してます。本当のことは口が裂けても言えないっす。」
「それが気遣いだよね。肉まんくん、もてるでしょ」
「全然もてないっすよ。ゴリラみたいな顔しているんで」
「ああ、そうなんだ。ちなみに、お隣さんはどんな感じ?」
「ベテラン女優の山口智子さんに似てるっす」
「いいじゃない。気風がよくて面倒見よさそうで。山口智子さんて昔、トレンディドラマで主役を張ってた人だからね。で、相談事というのは、どういうことになるんだろう。お隣のおすそ分けをやめてほしい。そういうこと?」
「いえ、それは全然いいっす。俺は食えるものなら、何でもいいんで。ただ、どうしたら、もっと親しくなれるかな、って」
「ああ、そういうこと。そんなの簡単じゃない。『いつもおすそ分けをもらっているので、一度、ご馳走させてください』。そう言って、シンプルに誘えばいい」
「いやぁ、それ、やってみたんすけど、逆に恐縮されちゃって。『作りすぎた料理を差し上げているだけだから』って、やんわりと断られました」
「そうかぁ。山口智子さんも、肉まんくんに関心があるのかなって、そんな風に思ったんだけど」
「そんな感じじゃないっす。俺も若干期待していた部分もあるんすけど、純粋なおすそ分けだったみたいで」
「だったら、山口智子さんが恐縮しない程度にレベルダウンしたら? イタリアンじゃなくて定食屋みたいな?」
「それでも、まだ恐縮されるかも。いっそ、俺の手料理で返そうと思っているんすけど。頑張って、おせち料理に挑戦しようかと……」
「いいじゃない、男の手料理。愛情込めてつくってあげてよ。何だよ、もう自分で問題を解決してるじゃない」
「いえ、アンディさんと話して、自分の心が決まったっす」
「山口智子さんと何か進展があったら、またハガキかメールをちょうだい。僕、待ってるから」
「わかったっす。必ず、報告します。今日は本当に、あざーっす」
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