蓮華薬師堂薬局の処方箋

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 その形式を変化させるためにも、この世の中を呪いで満たす必要がある。  この世を混乱に陥れる計画にも、薬師如来が現世にいるのは不都合なのだ。  あの仏がこの世にいるだけで、陳腐な呪いは総て浄化されてしまう。だからこそ、弱点がある今、それを取引材料として消し去ってやるのだ。  紫門はそこまで考えてくくっと喉を震わせる。 「悩み、苦しめ。その分、お前の力は弱まっていく。悟りを開いたものが惑うなど、笑止千万だからな」  目の前には禍事に使用する祭壇がある。本来あるべき清らかなものは一切なく、総てが朽ち果て、腐臭を発している。そしてその真ん中にあるのは、こっそりと抜き取った桂花の髪の毛数本が置かれていた。 「とはいえ、遊びもこれまで。そろそろ始めようか。人間に入れ込む如来と菩薩が去った気配はないからな。しかも、あの憎き陽明が何かをする様子もない。さて、どうするつもりなのか。気にはなるが好機でもある」
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