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９日後。
「おはよう小早川さん」
「おはようございます」
出勤し、私がロッカールームに着いて少し経
った頃、同じく早番の店長が出勤してくる。
３月も、半ばを過ぎると肌寒さが和らいで、
気候は、すっかり春だ。
こないだまでダウンコート姿だった店長も、
最近はもっぱらマウンテンパーカーで通勤し
ている。
「あっ、これ良かったら皆でおやつにして。
無理を言ってシフト変わってもらったお礼」
羽織を脱いだ店長が申し訳なさそうに言い、
木製のテーブルの上に白っぽい紙袋を置く。
見ると、フィナンシェで有名なメーカーの袋
だった。
バターたっぷりで季節限定なんかもあって、
男女問わず人気が高いデパ地下スイーツだ。
「わあ。
ありがとうございます。
わざわざデパ地下まで買いに行ってくれたん
ですか」
テーブルに近寄って紙袋をそろりと覗くと、
箱には英語でストロベリーと書いてあって。
女性スタッフが３人なので考慮してくれたの
だろう。
さすが、細やかな店長らしいチョイスだと、
心の中で一人感心する。
「ちょうど他に用事があって出かけたから、
お礼も買ってきたんだ。
奥さんがこのフィナンシェ美味しいよって」
「店長の奥さんスイーツ詳しいですもんね」
「三度の飯よりスイーツって豪語してるよ。
俺は普段から甘いものあまり食べないから、
今回は助けられたかな」
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