地に埋もれる永遠の支配

　やがて華子は大人になると，同じ集落で神主の家系である高槻家に嫁いでいった。当時，田舎の神社は貧しいところが多く，華子はすぐに長男，次男，長女をもうけたが栄養不足から産後の肥立ちが悪く三人は産まれてすぐに亡くなってしまった。

　ようやく三男である光雄が育つと，華子はこれ以上自分には役目は務まらないと言い残して池に入水して自らの命を絶ってしまった。

　母親を亡くした光雄は父親の後を継ぎ神主として育っていき，幼馴染の白百合(さゆり)所帯をもち若くして晴彦(はるひこ)をもうけたが，白百合は晴彦が産まれながらに異常が認められ，常に幻聴が聴こえていると知ると，華子と同じように池に入水自殺した。

　そんな晴彦がある日一人で部屋にいるはずが，誰かと話し込んでいるのが聞こえてきて，光雄は静かにその様子を伺った。

　ハッキリした口調は明らかに誰かと話している様子で，時々出てくる名前は皆，土石流に呑み込まれた山村の本家の人たちだった。

「晴彦……。が，学校の友達か……？　だ，誰か遊びに来ているのか……？」

　光雄は震える声を誤魔化しながら，恐る恐る息子の部屋に入っていった。