12人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
ゲートを抜け、ぼったくり駐車場へ向かう。そのために通るのは、ガードレールのない歩道。二人並ぶのが精一杯な狭さで、真横を車が走り抜ける。
「明日香。こっち側を歩いていいかな?」
昼は気が回らず、車道側を明日香に歩かせてしまった。せめて帰りだけでも。
「あ、どうぞ。でも、なんで?」
「そういう気分なのさ」
明日香を左に寄せ呟く。キザだと思われただろうか? でも、マイナス評価にはならないはず。
「ねぇ隆行……」
しばらく歩き、明日香が右の口角を上げながら小声で言った。
「どうした?」
また俺、やらかしたかな?
「こっち側さ、これがいっぱいついてくるんだよね……だから縦に並んで歩こうよ」
びっしりとくっつき虫がついたコートを指差しながら明日香は言った。
「……ごめん」
不安は見事に的中。明日香に先を譲り謝った。
駐車場までの三分間、陽に照らされたベージュ色のコートを、ただ眺めて歩いた。
最初のコメントを投稿しよう!