584人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
(Side:生徒A)
振り返った先の光景に、ついフラッと眩暈がして額を押さえる。
眩しすぎる……。
眩しすぎます……。
もう二度とお目にかかれるとは思っていなかった推しが、今、目の前に……。
あ、鼻血。
マスクしといてよかった。
いやね、流石の腐男子代表でも、推しを見たくらいでは鼻血は出ないさ。
だって、だってだよ!
なんと、大人の色気数倍増しになった推しが、キラキラ王子様に腰抱かれていますのさ!!
あ、日本語が。
いや、これくらいの方がこの興奮が伝わるだろう。
誰ですか、そのキラキラ王子様は!
新しい攻め要員様ですか!?
またどこかで引っ掛けたのですか!?
ナンパされたのですか!?
それとも、お知り合いで!?
質問したい。
いや、待て。
そんなことができる立場にない。
自分はあくまで腐男子、モブ。
自分なんかが話しかけていい相手ではないのだ。
メッタ打ちを喰らうどころのレベルでは済まされない。
とはいえ、気にもなりますよ。
ここは腐男子奥義秘伝姿眩まし存在感ゼロの術を発動せねば。
この術を使い、今まで幾度の腐ウォッチングを成功させてきたことか。
絶対の自信を誇るその術の発動をメッセージにて宣言する。
鳴り止まないバイブ音を消すために電源を落とし、もう一台常備してある高機能サイレントシャッター搭載のスマホを起動。
キラキラ集団にバレないように絶妙なスピードで並走。
時折後ろに下がってその後ろ姿をカメラに収めながら、その会話へと耳を傾けた。
「いい加減離れろ、お前は」
[ーーーーーーーーーー]
「お前のその行動で目立ってるんだろ」
[ーーーーーーーーーーー]
そこから始まった英語での会話。
いや、流石の高機能多数搭載の腐男子ですが、ハイスペック男子であるキラキラ集団とは違い、自動翻訳機能は備わっていません。
なんたる……。
英語を勉強しよう、と決意した瞬間だった。
最初のコメントを投稿しよう!