第3話 王の帰還

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(Side:生徒A) 振り返った先の光景に、ついフラッと眩暈がして額を押さえる。 眩しすぎる……。 眩しすぎます……。 もう二度とお目にかかれるとは思っていなかった推しが、今、目の前に……。 あ、鼻血。 マスクしといてよかった。 いやね、流石の腐男子代表でも、推しを見たくらいでは鼻血は出ないさ。 だって、だってだよ! なんと、大人の色気数倍増しになった推しが、キラキラ王子様に腰抱かれていますのさ!! あ、日本語が。 いや、これくらいの方がこの興奮が伝わるだろう。 誰ですか、そのキラキラ王子様は! 新しい攻め要員様ですか!? またどこかで引っ掛けたのですか!? ナンパされたのですか!? それとも、お知り合いで!? 質問したい。 いや、待て。 そんなことができる立場にない。 自分はあくまで腐男子、モブ。 自分なんかが話しかけていい相手ではないのだ。 メッタ打ちを喰らうどころのレベルでは済まされない。 とはいえ、気にもなりますよ。 ここは腐男子奥義秘伝姿眩まし存在感ゼロの術を発動せねば。 この術を使い、今まで幾度の腐ウォッチングを成功させてきたことか。 絶対の自信を誇るその術の発動をメッセージにて宣言する。 鳴り止まないバイブ音を消すために電源を落とし、もう一台常備してある高機能サイレントシャッター搭載のスマホを起動。 キラキラ集団にバレないように絶妙なスピードで並走。 時折後ろに下がってその後ろ姿をカメラに収めながら、その会話へと耳を傾けた。 「いい加減離れろ、お前は」 [ーーーーーーーーーー] 「お前のその行動で目立ってるんだろ」 [ーーーーーーーーーーー] そこから始まった英語での会話。 いや、流石の高機能多数搭載の腐男子ですが、ハイスペック男子であるキラキラ集団とは違い、自動翻訳機能は備わっていません。 なんたる……。 英語を勉強しよう、と決意した瞬間だった。
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